君たちはどう生きるかの考察パート2です。
映画を観賞して記憶が鮮明なうちに書き残しておきたいと思います。
ネタバレを多く含みますので、映画館でご覧になりたい方はご注意ください‼️
- 眞人が旅した世界はなんだったのか?
- 真人が旅した世界はなんだったのか?
- 大叔父様が真人に世界を託した理由とは?
- 大叔父様の正体とは?
- 大叔父様はなぜ猿ではなくインコを選んだのか?
- 君たちはどう生きるかのメッセージとは?
眞人が旅した世界はなんだったのか?
①地球とは別の惑星?
眞人が迷い込んだ世界には人類が生存しているような描写はありません。登場する人間は眞人と同じように別の世界から来た人たちだけです。
人間の代わりにインコ達が知能を持ち、二足歩行し、料理や政治を行い、まるで人間のように繁栄しています。
しかも、インコ達は人間を食べるというちょっとこわい設定。インコ達から見て人間は捕食対象であり、あの世界における食物連鎖の頂点は人間でなく、インコなのです。
つまり、あの世界では我々人類の祖先である猿人が進化しなかった、代わりにインコが進化した世界だということがわかります。だから人間がいないのです。
では、あのインコが繁栄した世界とは、いったいどこなのでしょうか?
一つ考えられるのは「あの世界は地球とは異なる惑星で、猿の代わりにインコが進化した」という仮説でしょう。
行方不明になったナツコを探す眞人は、石で囲まれた産屋の中にでナツコと再会しますが、強い力に弾かれて気を失ってしまいます。
意識を取り戻した眞人がたどり着いた場所は、三つの巨石に囲まれた三角形の通路。周囲の巨石は怪しい光で輝いており、強力なエネルギーを持っているようです。通路を進むと石造の神殿の大広間のような場所に通じており、そこで大叔父様と対面する事となります。
この大広間に続く通路なのですが、スタンリー・キューブリックの宇宙をテーマにした作品、「2001年宇宙の旅」に登場する宇宙船の内部の通路と雰囲気がそっくりなんですよね。
大叔父様の初登場シーンは青鷺に誘われて古びた塔の中ですが、塔の上から眞人を見下ろすような位置に立っていました。塔の天井には星座の壁画が描かれている事からも、大叔父様と宇宙の関係を匂わせているように思えます。
また、宇宙に関するシーンとして、最後に世界が崩壊する場面があります。積み木が崩れ、大叔父様の頭上の石が壊れると、大叔父様がいた神殿も崩れさってしまうのですが、崩れた神殿の隙間から、宇宙空間が見えることから、神殿の外側には宇宙が広がっている事がわかります。
宇宙のどこかにあるインコが進化した惑星と、地球が繋がってしまった。
二つの星で時間の進む速さが異なるため、幼い頃の眞人の母と、眞人は出会う事ができた。ということなのかもしれません。
真人が旅した世界はなんだったのか?
②未来の地球?
ワラワラ達に餌?をやり終えた眞人は、キリコさんの家で食事をご馳走になります。
眞人はトイレをしに家の外に出るシーンがあるのですが、そこで、キリコさんは旧約聖書の「ノアの方舟」のような巨大な船を住処にしている事がわかります。
ノアの方舟のような巨大な船の廃墟な映像は過去のジブリを映画にも、ちょくちょく出てきて、見覚えがありますよね。
© 2006 Studio Ghibli・NDHDMT |
© 1986 Studio Ghibli
「天空の城ラピュタ」のオープニングの空飛ぶ船。
見た感じだとかなり古い船のようだったので、遥か昔の人々が作ったのでしょう。
インコ達は文明を築いてはいるものの、見たところ巨大な船を作れるほど、文明が発達しているようには見えません。
インコ達の文明の最盛期は、ずっと昔の話で、今では船の作り方を忘れてしまったのか。あの世界でのノアの方舟には人間ではなくインコが乗り込んだのか。あるいはインコ達が繁栄する前に別の種族がいたのではないか。と色々と想像する事ができます。
ひょっとすると、あの世界は人類が一度絶滅した後の未来の地球なのかもしれません。そう考えると「風の谷のナウシカ」の続編とも思えてきます。
© 1984 Studio Ghibli・H
風の谷のナウシカの設定を思い出してみると、産業革命から1000年後の科学技術を発展させすぎた未来。地球の陸地の殆どは腐海と呼ばれる毒ガスを噴き出す植物に覆われてしまい人類は絶滅寸前に追い込まれてしまっていました。あの後、人類は残念ながら滅びてしまったのではないでしょうか。
腐海によって人類が滅亡した地球は、浄化作用によって自然の美しさを取り戻し、清らかな海や動物達が蘇ります。キリコさんが捕獲した魚は太古の地球に住むような古代魚だったのも納得できます。
© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT
人類の繁栄が地球の一周目だとするならば、インコの繁栄は2周目の地球なのかもしれません。
大叔父様が真人に世界を託した理由とは?
大叔父様と対面した真人。大叔父様は子孫である眞人が訪れる時をずっと待っていました。二人は次のようなやり取りが交わします。
大叔父様「この13個の積み木を積み上げて世界の続きを作ってくれ」
眞人「これは木じゃなくて、石です」
大叔父様「それに気づく事ができる真人にこの世界を託したいのだ」
この部分もかなり意味がありそうです。大叔父様は眞人の事を「気づく事ができる人間」だと認めています。このあたりは、眞人という名前にぴったりだな〜と感じながら見ておりました。
「真人」という言葉の意味を調べると、古来日本が飛鳥時代だった頃、時の天武天皇が、先代の天皇の子孫達に与えた姓(カバネ)(※苗字のこと)とあります。
「真人」という称号の由来は一説によると、紀元前3世紀の中国、秦の始皇帝が朕に代わる一人称として、真理を悟った人として「真人」を使用してたことがあります。
眞人もまた大叔父様と同じように、この世界の真理に気がつき、世界を良い方向に導いていける人間なので、後継者に相応しいと考えていたのではないでしょうか。
八色の姓に関する記事はこちら↓
大叔父様の正体とは?
お叔父様については、「大変頭の良い方だったが、塔の中で様々な書物に没頭した末に、突然失踪してしまった」と語られていました。
物語が進むにつれて、塔から姿を消した大叔父様はまだ存命であり、真人が迷い込んだ不思議な世界の創造主となっていた事がわかったのです。
大叔父様がどうやってあの世界へ行ったのか?
なぜ不思議な力を持っているのか?
については映画を最後まで見ても解説されていません。そこで下のように考えました。
昔、宇宙から隕石が落ちてきた。隕石。発見した大叔父様は、貴重な資源を守るために、隕石の周りを囲うように塔を建てた。
大叔父様は隕石が生み出す不思議な現象や、魅力に取り憑かれて、その生涯を隕石の研究に捧げた。
隕石がやってきた場所、「宇宙」について研究するうちに、我々が住む地球という星の成り立ちについて、我々人類が誕生した起源について知った。同時に人間同士で争いを繰り返し、自然を蔑ろにする人類の愚かさを知った。
人類の傲慢さに絶望した大叔父様は隕石が作り出す不思議なエネルギーと、蓄積した膨大な知識によって、新しい世界(星)を作り出す事に成功。その星では猿人ではなく、インコが進化し繁栄していった。
人類が滅亡した後の地球で、生命の誕生から文明の滅亡を見守る話は手塚治虫の火の鳥に共通しています。
主人公マサトは火の鳥に永遠の命を与えられ、人類が滅亡した後の地球で、一から生命を作り始める。海の中のプランクトンから魚が生まれ、両生類が陸に上がり、生まれた文明は人類ではなく、ナメクジが進化した違う生命体だった。
長い長い年月を経て生まれたナメクジでしたが、またたくまに数が増えていき、人類と同じように争いを始めてしまい、やがて滅んでしまうのです。
大叔父様の庭園に入ったインコ王の部下は、残された自然の美しさを見て、「王様、ここは天国ですか?」と発言している事から、あの世界もインコの繁栄によって、残された自然は少ないのかもしれません。眞人という名前もどこか、火の鳥のマサトに似てますね。
大叔父様はなぜ猿ではなくインコを選んだのか?
個人的には、大叔父様は意図的にインコを選んだわけではないと思います。
地球に様々な種類の動物がいる中で、偶然インコが増えて、進化したのではないでしょうか。
その根拠は『2001年宇宙の旅』に次のようなシーンがあります。(先ほどの『火の鳥』にも共通するところです)
我々人類の祖先猿人は、力が弱く肉食動物の食べ残しをあさって食べるという生活をしていました。
ある日、宇宙から現れた謎の石板モノリスに接触した猿人は、脳神経を刺激され「道具を使う」事を覚えます。
動物の骨を手に持って武器として獣を倒す事を覚えた類人猿は、自らの力で狩りを行い、獲物を捕らえ、食を手に入れる事ができるようになったのでした。
この映画からは、神が意図的に人類を作り出したわけではなく、偶然モノリスに接触したのが、地球に住む数ある生物の中の猿だった。人類は選ばれし種族ではない。事がわかります。
大叔父様もインコに期待して、選んだわけではなく、たまたまインコが増えて、進化したのでしょう。
君たちはどう生きるかのメッセージとは?
宇宙からやってきた隕石によって、地球にアミノ酸がもたらされ、生命が誕生した。
生命体の中のひとつ、猿がたまたま進化して人類が繁栄した。
人類は自然豊かで楽園のような地球を科学技術によって、破壊して、争いの時代にしてしまった。
本作では「自然」と「科学技術」を対比しており、自然を木、科学技術を石として積み木のように歴史を積み重ねたきたよね。と表現しているのではないでしょうか。
これを悟り、変えようとした大叔父様。大叔父様が作った世界でも残念ながらインコ王が積み木を崩して、世界を崩壊させてしまうという愚かな存在となってしまいました。
石で積み上げた人間の世界に戻る眞人と、私たち映画館の聴衆に対して「自然を大切にしないか?人間が一番偉いと思っていないか?どう生きるか?」問いかけている映画かなと自分は感じました。
皆さんはどう受け取りましたか?
ぜひ感想を教えてください(^^)
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