死滅回游の泳者として登場した天使・来栖華(くるすはな)の術式「邪去侮の梯子」(やこぶのはしご)について考察します。
※『呪術廻戦』213話のネタバレを含みます。
目次
ヤコブのハシゴとは?
『呪術廻戦』17巻より
「邪去侮の梯子」(やこぶのはしご)は213話で天使が宿儺相手に使用した対象者の術式を消滅させる天使の術式です。「光よ、全てを浄化したまう光よ」から始まる詠唱によって、空に六芒星と十字架の魔法陣が現れ、直後に大きな光の柱が降り注ぎました。
『呪術廻戦』17巻より
天使は「邪去侮の梯子」によって伏黒恵の体から宿儺を剥がそうとしていました。
ヤコブのハシゴの由来は?
「邪去侮の梯子」(やこぶのはしご)の由来は、『旧約聖書』に登場する「ヤコブの梯子」(Jacob's Ladder)地上と天国をつなぐ梯子です。
『旧約聖書』とはユダヤ教の聖典であるとともに、キリスト教とイスラム教にとっての聖典でもあります。『旧約聖書』という呼び方は、後から作られたキリスト教の『新約聖書』、イスラム教の『コーラン』よりも古い教えという意味があり、ユダヤ教では「旧約」をつけずに「聖書」と呼びます。
「邪去侮の梯子」(やこぶのはしご)の元ネタ「ヤコブのはしご」は『旧約聖書』にどのように登場するでしょうか。
『旧約聖書』に登場するヤコブの梯子とは?
「ヤコブの梯子」のヤコブとは、旧約聖書の創世記に登場するヘブライ人の族長であり、ユダヤ人の祖であるアブラハムの孫にあたります。 そして、全てのユダヤ人は、ヤコブの子孫であるとされています。
ヤコブはベエル・シェバを立って、カランへと旅立った。 ある所についたとき、ちょうど日が沈んだので、そこで一夜を明かすことにした。 彼はその所の石の一つを取り、それを枕にして、その場所で横になった。 そのうちに彼は夢を見た。見よ。一つの梯子が地に向けて立てられている。その頂は天に届き、見よ、神の使いたちが、その梯子を上り下りしている。
このように、双子の兄エサウから命を狙われるようになったヤコブが、エサウから逃げる途中で天に届く梯子の夢を見たことがエピソードから、ヤコブの夢に出てきた天に届く梯子を「ヤコブの梯子」と呼ぶようになったのです。
ヤコブは、この「ヤコブの梯子」が登場する夢の中で自分の子孫たちが偉大な民族になると神から約束されます。
この夢の意味はアブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)においてもヤコブが神から選ばれた民と責務を受け継ぐことで一致しています。
千年前の天使がなぜ旧約聖書を知っているのか
『呪術廻戦』145話より
来栖華(くるす はな)は、“天使”という1000年前の術師が受肉した、“受肉型の泳者”です。
1000年前といえば平安時代末期となります。この時代の人物が旧約聖書を知っていたのかは疑問です。
日本に『旧約聖書』が伝わったのは、1549年(天文18年)ポルトガル人キリスト教徒が種子島にやって来た時とされています。
あるいは、日本の神話である『古事記』や『日本書紀』に『旧約聖書』と似通ったエピソードがあることからもっと昔から伝わっていたのかもしれません。