大和地方で大規模な前方後円墳である箸墓古墳が登場したのとほぼ同時期に関東で古墳が築造されています。この記事では関東の古墳の出現とその被葬者について考えます。
関東最古の古墳は？
関東最古の古墳は、出現期（３世紀中葉）古墳として注目される養老川沿いの「神門(ごうど)５号墳」です。
神門5号墳がある千葉県市原市は、古代における上海上国(かみつうなかみのくに)がありました。上海上国(かみつうなかみのくに)には100年後の５世紀になると、大古墳が築造されていきます。
また、日本武尊(やまとたけるのみこと)来訪の伝承がありますが、神門5号墳はその頃よりも以前の豪族のものとなるでしょう。(箸墓古墳を崇神天皇時代の築造とした場合)
房総の古墳
古墳時代には、栗山川以西の太平洋沿岸に、武佐国（下総）、夷隅川流域に伊甚国があり、東京湾を望んで、村田川流域に菊間国、養老川流域に上海上、小櫃川流域に馬来田国、小糸川流域に須恵国がありました。
養老川流域の上海上国には、現在の大多喜辺りまで多数の古墳が築かれています。江古田金環塚古墳や山倉１号墳など古墳時代後期まで古墳が築かれた地域です。
養老川流域には、総数300有余の古墳が分布しており、姉崎古墳群は養老川下流左岸、JR姉ヶ崎駅より南東に広がる沖積地と標高30～40mの台地上に立地しています。古墳群は、４世紀後半から約300年間造られ、８基の前方後方墳と10数基の円墳からなり、７世紀後半、前方後方墳の六孫王原古墳が造られ造営が終息します。
古墳時代終末期、千葉県では大型方墳や円墳が築造されますが、なぜか養老川流域では前方後方墳が築造されるようになります。
房総で古墳時代前期から中期までの多数の古墳が築造された小櫃川流域（馬来田国）と中期以降の大型前方後円墳が系統的に築かれた小糸川流域（須恵国）と併せて重要な地域です。
古代の関東の国造についてはこちら↓
姉崎神社と日本武尊
千葉県市原市にある式内社である姉崎神社は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際に、海路の安全を祈って風神であり女神である志那闘弁命（しなとべのみこと）を祀ったのが始まりと伝わっています。
祭神の志那闘弁命(しなとべのみこと)は、社伝によれば、約３km北にある島穴神社に祀られている志那都比古命(しなとひこのみこと)の妃で、夫の帰りを待ったが、いつまでたっても帰らず、「待つ」と「松」の読みが同じなので松を嫌い、広い境内には松は一本もないといいます。またこの辺りでは、正月に門松を飾らないしきたりになっているそうです。
姉埼神社には上海上国造に任じられた忍立化多比命(おしたちけたひのみこと)が天児屋根命と塞三柱神を合祀したとされており、姉崎古墳群は姉埼神社を氏神として祀っていた上海上国造一族の墳墓といわれています。
忍立化多比命(おしたちけたひのみこと)とは
『先代旧事本紀』国造本紀では、忍立化多比命(おしたちけたひのみこと)を筆頭にその子孫の出雲族が次々と関東の国造に任命されていきます。忍立化多比命(おしたちけたひのみこと)はいつ関東にやって来たのでしょうか？
国造本紀では成務天皇(第13代で日本武尊の異母兄弟)の時代に忍立化多比命(おしたちけたひのみこと)が国造に任命されたとあります。
『高橋氏文』では、鹿六獦命(いわかむつかりのみこと＝大彦命の末裔)に従って景行天皇（第12代天皇）に料理を献上した大多毛比は「無邪国造」の上祖であるとしており、『先代旧事本紀』の系譜と矛盾するため時代がよくわかりません。
出雲族はいつ関東にやってきたのかは改めて考えてみたいと思います。
