この記事は大阪府にある鳥取氏にゆかりのある神社を訪問した際に少彦名命との関連を見つけたので記録しました。
宿奈川田神社 (すくなかわだじんじゃ) とは

大阪府柏原市高井田に鎮座する宿奈川田神社 (すくなかわだじんじゃ) は、延喜式神名帳 の河内国大縣郡の項にある式内社です。別名は白坂神社と呼ばれています。
祭神 は宿奈彦根命(すくなひこねのみこと) 、高皇産霊命(たかみむすびのみこと) 、級戸邉命 (しなとべのみこと)を祀っています。
室町時代の『大宮大明神末社帳』(1467年)によれば、「当社は白坂大明神と称し、祭神は宿奈彦名命で天湯川田奈命※の祖神である」とあり、 鳥取連が祖神である宿奈彦根命(すくなひこねのみこと)を祀った神社と考えられています。
※天湯川田奈命(あめのゆかわたなのみこと)は第11代垂仁天皇の命令で白鳥を捕らえたことで鳥取(とっとり)の名前を賜った人物(詳しくは以下)
宿奈川田神社 (すくなかわだじんじゃ) の社伝にある系図をまとめると、以下のように、宿奈彦根命のほうが天湯川田奈命(あめのゆかわたなのみこと)よりも先代となります。
また、『先代旧事本紀』には「天湯川桁命の子は少彦根命」とされています。

『古事記』で大国主と共に各地で医療を普及した神である少彦名が鳥取氏と関連していたとは初めて知りました。 天湯川桁命が垂仁天皇の時代(4世紀初旬の人か?)とするならば、子の少彦根命は大国主と各地を旅した人物とは別人、先祖の名前を襲名したのではないでしょうか。
記紀神話で有名な天湯川田奈命ではなく、あえてより先代の宿奈彦根命を祀っている理由は気になるところです。宿奈彦根命の子孫ではあるが、天湯川田奈命とは別系統という意味なのでしょうか。

天湯川田奈命よりも先代の鳥取氏の先祖を祀る神社として大阪府阪南市石田に鎮座する波太神社(はたじんじゃ)があります。天湯河板挙一族の居住地たる大字桑畑の奥の宮に、角凝命(つのこりのみこと)を奉祀したのが起源とあります。天湯川田奈命は角凝命(つのこりのみこと)の3世孫です。
宿奈川田神社 (すくなかわだじんじゃ) を参拝

高井田駅から徒歩5分の距離に鎮座します。

祭神に高皇産霊神(たかみむすびのみこと)が祀られているのは不思議です。高皇産霊神(たかみむすびのみこと)と同じ造化三神である神皇産霊神(かみむすひのかみ)は鳥取氏のルーツなのですが。『斎部宿祢本系帳』では皇産霊尊(かみむすびのみこと)-角凝魂命 ─伊佐布魂命─天底立命-天背男命-天日鷲翔矢命としていますので。

本殿は非常にシンプルで境内の敷地の多くは集会所として利用されていました。

鳥居の眼下には大和川が流れています。

科戸辺命(しなとべのみこと)という風の神を祀っているのは 古代の奈良と大阪を繋ぐ龍田古道が由縁でしょうか。
少彦名命は渡来系の神か?

『古事記』では少彦名命は海の向こうの常世の国からやって来たとされています。大国主の神話の舞台が出雲であることを考えると海の向こうの国とは朝鮮半島ではないかとも考えられます。

大阪市道修町(北浜)にある少彦名神社では少名彦命を医薬の神として祀っていいますが、興味深いのが少名彦命神社を「神農(しんのう)さん」と呼んで祀っています。

神農(しんのう)とは中国の建国神話における三皇五帝の一人で、人々に医療を普及したとされる神です。
まとめ
・宿奈川田神社 (すくなかわだじんじゃ) には鳥取氏の祖先として宿奈彦根命(すくなひこねのみこと)を祀っている
・少彦名命の海の向こうからやってきたという伝承や、人々に医療技術を授けたとする伝承から渡来の神であったと考えられる