古代史好きなサラリーマンのブログ

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高天原の最高神にして出雲の御親「神産巣日神(かみむすびのかみ)」とは?

日本神話の始まりに現れた三柱の神々、「造化三神(ぞうかさんしん)」。その一柱である神産巣日神(かみむすびのかみ)は、日本神話において登場するのは葦原中国(あしはらのなかつくに)のエピソードばかりです。この記事では出雲系の祖神といわれる神産巣日神(かみむすびのかみ)について考察していきます。

 

 

 神産巣日神(かみむすびのかみ)とは?

神産巣日神(かみむすびのかみ)は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)と共に、最初に姿を現した三神の一角です。

石ノ森章太郎古事記』より

神産巣日神(かみむすびのかみ)は、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)の神とは対照的に、天孫降臨などの高天原(=神が住む天上界)の戦いとは一切関わらず、「葦原中国(あしはらのなかつくに)(=人間が住む地上)の国づくりを様々な場面でサポート」することに集中しています。  

 

葦原中国(あしはらのなかつくに)は、天孫族が統治するにふさわしい国として、攻めるように指示を出した神こそ、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)です。

高天原の最高司令官ともいえる高皇産霊神(たかみむすびのかみ)は、かつて、高木神(たかぎのかみ)として、筑紫(九州)で祀られたと考えられています。

一方で、神産巣日神(かみむすびのかみ)は、葦原中国の神・出雲(=現在の島根県)の創生に関わる御親として祀られます。

 

 同じ最高神でありながら、高天原の侵略を主導した高皇産霊神とは対照的で、この「矛盾点」こそが、彼女が出雲系の神々にとっての特別な「祖神」であることを物語っているのではないでしょうか。

 

神産巣日神は「恵みの神」

日本神話における神産巣日神(かみむすびのかみ)の功績は、人々が生きる上で不可欠な「治療」「豊穣」「知識」など、地上の人間たちに恵みをもたらすものばかりです。  

 

①地上に 五穀(食の種)をもたらした神産巣日神

 天地開闢の次に神産巣日神(かみむすびのかみ)が登場するのは、須佐之男命(すさのおのみこと)に関連するエピソードです。

『マンガ古事記 神話編』より

高天原で大暴れしたことで高天原を追放された須佐之男命(すさのおのみこと)は、母のいる根堅州国(ねのかたすくに)を目指して放浪していました。

 

旅の途中で、豊穣の女神である大宜都比売神(おおげつひめのかみ)(阿波国=現在の徳島県で祀られる神)と出会い、食を請うと、おもむろに様々な食べ物を須佐之男命(すさのおのみこと)に与えました。

    『マンガ古事記 神話編』より

不思議に思った須佐之男命(すさのおのみこと)が、大宜都比売神(おおげつひめのかみ)の所作を覗き見ると、なんと、鼻や口、しまいにはお尻からも食べ物を出して盛り付けているではありませんか。

     『マンガ古事記 神話編』より

須佐之男命(すさのおのみこと)は、大宜都比売神(おおげつひめのかみ)がわざと食べ物を汚しているのだと誤解して、大宜都比売神(おおげつひめのかみ)を殺めてしまいます。

 

大宜都比売神の遺体から五穀(蚕、稲、粟、小豆、麦、大豆)が生じると、神産巣日神はその品々を須佐之男命に与え、「葦原中国にもたらして育てるよう」促しました。  これによって地上世界に食料と衣料の種がもたらされ、後の国づくりに繋がったという神話です。

 

このような豊穣の女神の遺体から様々な食物が生じるお話は、「ハイヌウェレ型神話」として太平洋地域やアフリカの国々などに広く分布していることから海洋民族からもたらされた神話であることがわかります。

 

 ② 大国主命を蘇らせた神産巣日神

次に、神産巣日神(かみむすびのかみ)が登場するのは、大穴牟遅神(おおなむちのかみ)が、兄神たちの策略によって大火傷を負い、命を落とした場面で、大穴牟遅神(おおなむちのかみ)の命を蘇らせるエピソードです。

石ノ森章太郎古事記』より

神産巣日神(かみむすびのかみ)は娘である𧏛貝比売(きさがいひめ)(赤貝の女神)と蛤貝比売(うむがいひめ)(ハマグリの女神)を使わし、  大穴牟遅神(おおなむちのかみ)を治癒させます。

 

赤貝の血の色が父性を、ハマグリの乳白色の汁が母性を象徴すると解釈され、この二柱の女神による治療は、「父性愛と母性愛が合わさって失われた命を再生させる」と解釈できるのではないでしょうか。命を救ったのが貝の女神であることにも海洋民族を感じますね。

③ 国づくりを助ける「知識の神」を派遣した神産巣日神

次に神産巣日神(かみむすびのかみ)が登場するのも、大穴牟遅神(おおなむちのかみ)に関連するエピソードです。

大穴牟遅神(おおなむちのかみ)が国づくりに励んでいる時、神産巣日神の御子である少彦名神(すくなびこなのかみ)が、小さな姿で出雲の美保(みほ)の岬にやってきます。 

 

少彦名神(すくなびこなのかみ)の特徴はその小ささで、ガガイモの実を船にして、蛾の羽を衣にしていたという記述からもその小ささがうかがいしれます。

石ノ森章太郎古事記』より 

神産巣日神(かみむすびのかみ)は「その子(少彦名神)は誠にわが子です。あなたと兄弟(ともがら)となり、ともに国づくりに励みなさい」と告げました 。  少彦名神は医療、温泉、呪い(まじない)、穀物、酒造など、国づくりに必要なあらゆる知識をもたらし、大国主命の「なくてはならない最良の相棒」となりました。  

 

大国主命神産巣日神(かみむすびのかみ)を「親神」と呼ぶ理由

出雲の国譲りの最終局面で、大国主命(おおくにぬしのみこと)は高天原から攻めてきた天津神たちに国を譲り渡すのですが、その誓約(うけい)の言葉の中で、神産巣日神(かみむすびのかみ)を「祖神(おやがみ)」と呼びます。

 

 須佐之男命(すさのおのみこと)に豊穣の種を与え、大国主命(おおくにぬしのみこと)を救い、知恵の神を派遣するなど、葦原中国の建国が神産巣日神の主導のもと、進められたためでしょう。

 

出雲系の神々にとって神産巣日神(かみむすびのかみ)が真の祖神なのですが、出雲が天孫族に譲られた以降、神産巣日神(かみむすびのかみ)は全く登場しなくなります。

 

 

神産巣日神(かみむすびのかみ)の子孫

神産巣日神(かみむすびのかみ)は、出雲の神の祖先神とされることから、その子孫は出雲に関連する神が多いのが特徴です。

さきほど紹介した𧏛貝比売(きさがいひめ)(赤貝の女神)と蛤貝比売(うむがいひめ)や少彦名神の他、紀伊国造の祖である天御食持命(あめのみけもちのみこと)や、鳥取氏の祖となった角凝命(つのこりのみこと)、対馬で祀られる多久頭(たくず)神がいます。

 

 

 

神産巣日神(かみむすびのかみ)には「神魂命(かむたまのみこと)カムタマノミコト」という別名もあり、『出雲国風土記』では、所造天下大神の宮の造営を大穴持命(おおなもちのみこと)に命じています。

 

先代旧事本紀』にもその名がみえることから、高天原神話では神産巣日神(かみむすびのかみ)、それ以外の地域の神としては、神魂命(かむたまのみこと)と呼ばれていたことがわかります。

 

記紀神話において、天照登場以前の神であり、出雲で祀られる神産巣日神(かみむすびのかみ)や筑紫で祀られる高皇産霊神(たかみむすびのかみ)は、大和朝廷ですら無視する事が出来ない大きな存在だったのではないでしょうか。

 

まとめ

神産巣日神(かみむすびのかみ)は高天原神話における造化三神の1柱である

神産巣日神(かみむすびのかみ)が神話に登場するのは葦原中国の建国から出雲国譲りまでであり、それ以降は登場しない。

神産巣日神(かみむすびのかみ)の子孫は出雲に関連する神が多い