コロッセオ、ダヴィデ像、パルテノン神殿、ミロのヴィーナスは大理石で作られています。五重塔や金剛力士像など木造の日本の仏像や建築物とは異なる印象を受けます。
その背景にはヨーロッパの地形的な特徴が関係しているのです。
大理石とは
サンゴは別名「結晶質石灰岩」と呼ばれ、サンゴや貝殻が長い年月の間圧力をかけられて形成されたものです。
サンゴといえば赤道付近、日本でいうと沖縄のように温暖な海をイメージしますが、緯度でいうと日本の北海道や東北にあたるヨーロッパの海にはサンゴは生息していません。
いったいなぜ寒いヨーロッパにサンゴの産物である大理石が多いのでしょうか。
大陸移動説とテチス海
ヨーロッパで産出される大理石は太古昔ヨーロッパの海が赤道付近にあったころの名残だと考えられています。
ヨーロッパの海といえば地中海ですが、今から2億年前には赤道付近にあった「テチス海 (Tethys Ocean, Tethys Sea)」 が大陸の移動と共に現在の位置まで移動して地中海となったのです。
かつてパンゲアという1つの大陸が2億年前から分裂を始めローラシア大陸とゴンドワナ大陸の2つに分かれました。その間に形成されたのがテチス海です。
その後アフリカ大陸とインドがテチス海を塞ぐようにローラシア大陸に繋がり、赤道付近にあったテチス海は現在のヨーロッパの位置まで北上したのでした。
テチス海の名前の由来はギリシア神話の海の女神・テーテュース (Tethys) からです。最初の神ウラノスとガイヤの娘でタイタン12神の一角でゼウス率いるオリンパス神よりも古い神です。
テチス海が石油資源を残した
テチス海の名残はヨーロッパだけではなく中東やインドにも見られます。
中東といえば石油産出国として有名ですが、石油は大昔のプランクトンなどの海洋生物の死骸が地層に閉じ込められたものです。これらの生物が暮らしていた海がテチス海なのです。
インド方面をみてみると世界最高峰のエベレストがあるヒマラヤ山脈があります。ヒマラヤ山脈はインドがユーラシア大陸にぶつかった衝撃で生じた山で、テチス海だった海底が大きく持ち上げられています。
その証拠にヒマラヤ山脈の山頂は石灰岩でできており海洋生物の化石が見つかっているのです。
大理石の由来は?
「大理石」と言う名前は、中国雲南省北西部の大理地区で産出されたことに由来しています。
雲南省には大理石の素材である石灰岩が雨によって削られた「カルスト」という地形を見ることができます。
広西(こうせい)自治区の桂林やベトナムのハロン湾でも立派なカルスト地形が残っています。
日本のカルスト地形も見てみたいですね。
まとめ
・大陸の移動が地中海沿岸の大理石文化のきっかけとなった
・石油産出国はテチス海の名残
・ヒマラヤ山脈はかつてテチス海の底だった
参考文献
![世界史と地理は同時に学べ! [ 山崎圭一 ] 世界史と地理は同時に学べ! [ 山崎圭一 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/0202/9784815620202_1_5.jpg?_ex=128x128)
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