2024年6月12日に公開されたMrs. GREEN APPLE(ミセス)の新曲「コロンブス」のMV(ミュージックビデオ)が、「先住民を類人猿に見立てているかに見える」「差別的だ」と批判され、SNSで炎上。翌日13日、リリースしたばかりのMVの公開停止が発表されました。
この件はBBC(英国放送協会)でも記事になっており、日本だけでなく海外のメディアからも注目を集めています。
なぜこれほどに問題視されているのでしょうか。
目次
コロンブスを題材にしてしまった
問題視されているのは3人のバンドメンバーが扮した歴史上の人物(コロンブス、ナポレオン、ベートーヴェンに扮した姿)が類人猿に遭遇し、音楽を教えるというMVのストーリーです。
「コロンブス」は1492年、スペインから西へ航海し、今日のバハマ諸島に到達したことから西洋諸国からすると新大陸を発見した歴史的偉人と考えられています。(年号の覚え方はイヨクニ燃えるコロンブス)
一方でコロンブスのアメリカ大陸発見は、当時アメリカ大陸に住んでいた先住民族の文化を滅ぼすきっかけになったとも言われています。
コロンブスが新大陸を発見した30年後の1521年にはメキシコの地にあったインディオのアステカ王国がスペインのコルテスによって征服され、滅亡しているのです。
ニューヨークのコロンブスデー
アメリカでは毎年10月第二月曜日は「コロンブスデー」という祝日になっています。米大統領はこの式典で「数百年にわたり行われた暴力や強制退去、同化政策、恐怖政治を忘れないために」とコメントしていることから、アメリカ人にとってコロンブス=侵略、同化政策の象徴というイメージがある事がわかります。
新大陸の人々を類人猿として表現してしまった
アステカ王国の戦士
コロンブスがアメリカ大陸に辿り着いた時代には先住民が長い歴史の中で独自の文明を築いていました。
アステカ王国はコロンブスが生まれた西洋文明と異なる文化を持っており、優劣はないと考えるのが現代の価値観です。
(写真:『Mrs. GREEN APPLE』公式YouTubeより引用)
ミセスのMVでは類人猿が登場し、コロンブスらによって音楽を教えられたり、人力者を引いたりする場面があります。
これではまるで、新大陸に住んでいる先住民は文明的に遅れた類人猿であり、西洋人によって先進的な文明を与えられたと主張する「帝国主義」のようです。
一昔前の戦前であれば帝国主義が世界の常識であった時代もありました。しかし現代ではタブー。SNSではこの動画が人種差別的だ、奴隷制を肯定するものだといった批判が相次いでいるのです。
Mrs. GREEN APPLEに悪意はあったのか?
個人的には人種差別や帝国主義を肯定する意図があったわけではないと考えています。
今回の騒動についてMrs. GREEN APPLEの大森元貴氏は13日に発表された謝罪文で、この動画は「年代の異なる生命がホームパーティーをする」様子を表そうとしていたと説明。「(類人猿については)差別的な表現に見えてしまう恐れがあるという懸念を当初から感じておりましたが、類人猿を人に見立てたなどの意図は全く」なかったと述べた。 「決して差別的な内容にしたい、悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図はありませんでした」とも書いています。
Mrs. GREEN APPLE公式HPより引用
Mrs. GREEN APPLEは自身初のドーム・ライヴ[Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 "Atlantis"]を8月に開催しています。その続編となるライヴは"BABEL no TOH"と発表しています。
アトランティスは古代ギリシヤの哲学者によって紹介された海底都市で、バベルの塔は『旧約聖書』に登場する建築物であり、Mrs. GREEN APPLEは世界史に興味があるのだと思います。
そのような中で功績に賛否両論あるコロンブスをチョイスしてしまった事が残念です。
まとめ
インターネットで世界の情報にいち早くアクセスできるようになった現代では、さまざまな国の歴史や価値観から思わぬ批判に遭遇する事があることを実感し、歴史を学ぶ意義を痛感したニュースでした。
コルテスが滅ぼした古代メキシコ文明とは?
バベルの塔は本当にあったのか?